Googleクチコミを患者さんにお願いするときは、極めて重要な注意点があります。

依頼方法によっては、ステマ規制やGoogleの規約に違反してペナルティを受ける可能性があります。

2024年6月6日付で、消費者庁から医療法人に対する措置命令も出ています。

この記事では、Googleクチコミを患者さんにお願いする場合に、ステマ規制違反にならないための注意点を3つ解説します。

目次

ステマ規制の概要

ステマ規制とは、ステルスマーケティングに対する規制の略です。

ステルスマーケティングとは、広告であるのに、それを隠して行う広告のことです。

たとえば、インフルエンサーが、企業から金銭を受領しているのに、それを秘密にして、個人の感想として、商品や品質が優れていることをSNSでアップするのが典型例です。

具体的な規制は、景品表示法や内閣府告示で規定されています。

不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)第5条第3号

(不当な表示の禁止)

第5条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
3 ・・・商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの

内閣府告示第19号

不当景品類及び不当表示防止法第5条3号の規定に基づき、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示を次のように指定し、令和5年10月1日から施行する。

一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示

事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの

つまり、以下の2つの要素があるとステマ規制違反となります。
  1. 事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示(広告)であること
  2. 一般消費者が当該表示(広告)であることを判別することが困難であること

もっとも、内閣府告示のみだと、どこまでがステマ規制違反かはっきりしません。

たとえば、事業者がサービス・商品の購入者に口コミを依頼した場合はどうなるのでしょうか?

この点について、令和5年3月28日付の「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(消費者庁長官決定)に詳細な説明があります。

簡単に説明すると次のとおりです。

  • 事業者が表示内容の決定に関与したと認められる、つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合は、事業者の表示である。
  • 事業者が第三者の表示に関与したとしても、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められるものであれば、事業者の表示には当たらない。
運用基準では、次のケースについて第三者の自主的な意思に基づく投稿であり、事業者の広告ではないとしています。

投稿内容についてのやり取りが直接又は間接的に一切行われていないというのはポイントです。

ECサイトに出店する事業者が自らの商品の購入者に対して当該ECサイトのレビュー機能による投稿に対する謝礼として、次回割引クーポン等を配布する場合であっても、当該事業者(当該事業者から委託を受けた仲介事業者を含む。)と当該購入者との間で、当該購入者の投稿(表示)内容について情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われておらず、客観的な状況に基づき、当該購入者が自主的な意思により投稿(表示)内容を決定したと認められる投稿(表示)を行う場合。

消費者庁から医療法人に対する措置命令の概要

2024年6月6日付の消費者庁から医療法人に対する措置命令の概要は次のとおりです。

事案の概要

  • インフルエンザワクチン接種のためにクリニックに来院した者に対して、Googleクチコミのクリニックの評価として、★星4又は★星5を投稿することを条件にワクチン接種費用から割り引くことを伝えた。
  • ★星5の投稿が複数件なされた。

消費者庁の判断

  • 本件役務を一般消費者に提供するに当たり、第三者に対し、本件星投稿を条件に当該第三者がクリニックに対して支払うインフルエンザワクチン接種費用から割り引くことを伝えたことによって当該第三者が投稿した。
  • 表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められないことから、当該表示は、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である。
Googleクチコミの評価をクリニックで指定していたこと、高評価の投稿を条件に割り引くなどの経済的利益を付与していた状況から、患者さんの自主的な投稿ではなく、クリニックの広告であると認定されたといえます。


ステマ規制違反にならないための3つの注意点

Googleクチコミがステマ規制にならないための注意点は次の3つです。

  • ① Googleクチコミでなりすまし投稿をしたり、事業者から高評価を購入したりしないこと
  • ② Googleクチコミの★星の評価や内容を指定しないこと
  • ③ Googleクチコミの投稿に対して経済的利益を与えないこと

① Googleクチコミでなりすまし投稿をしたり、事業者から高評価を購入したりしないこと

次のような方法はやめましょう。ステマ規制に該当し、かつGoogleのポリシーにも違反する行為です。

  • Googleクチコミの点数を改善するという目的で、複数アカウントを自社で作成のうえで高評価をする
  • Googleクチコミの高評価を行う事業者から、高評価の口コミを購入する

② Googleクチコミの★星の評価や内容を指定しないこと

患者さんに★星の数や評価、コメント内容を指定するのもやめましょう。

クリニックが患者さんの投稿内容に干渉すると、投稿者の自主性に基づいたクチコミではない、クリニックの広告であると判断される可能性が高いです。

③ Googleクチコミの投稿に対して経済的利益を与えないこと

割引などの経済的利益を付与したからといって直ちにステマ規制に違反するわけではありません。

しかし、経済的利益の内容によっては投稿者のクチコミ内容に影響を与える可能性もあります。

また、経済的利益を付与して口コミを投稿してもらうことは、以下のとおり、Googleポリシーに違反します。

販売者が次の行為を行うことは許可されません。

・レビューの投稿や否定的なレビューの修正または削除と引き換えに、インセンティブ(支払い、割引、無料の商品やサービスなど)を提供する行為。

販売者が次の行為を行うことは許可されます。

・実体験に基づくコンテンツの投稿を、インセンティブを提供せずに求めたり促したりする行為。

そのため、Googleクチコミの投稿に対して経済的利益を付与することは控えましょう。

まとめ:患者さんの自主的な口コミであることが重要

  • 事業者の広告で、消費者が広告だと分からないものはステマ規制違反になる可能性があります。
  • Googleクチコミで、クリニックが星の数や評価の内容を指定することはステマ規制違反となる可能性があります。
  • ステマ規制違反にならないためには、以下の3つに注意しましょう。
    • ① Googleクチコミでなりすまし投稿をしたり、事業者から高評価を購入したりしないこと
    • ② Googleクチコミの★星の評価や内容を指定しないこと
    • ③ Googleクチコミの投稿に対して経済的利益を与えないこと

患者さんにGoogleクチコミの投稿をお願いすること自体は問題ありません。

評価や内容を指定することなく、患者さんの自主的なクチコミをお願いするようにしましょう。

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