お笑いトリオジャングルポケットの元メンバーの斉藤氏が不同意性交などの疑いで書類送検されたとの報道がありました。その報道を受けて、インターネット上やXでは相手を特定するような記事や投稿が複数あがっています。

相手を特定したり、推測投稿することは、プライバシー侵害、名誉毀損、名誉感情侵害で違法となり削除できる可能性があります。そのため、被害者を特定したり、推測投稿することは控えましょう。

この記事では、相手を特定する投稿などが違法となる場合について、誹謗中傷に詳しい弁護士が解説します。

なお、誹謗中傷の問題の解決は専門的な判断が必要です。悩んだら、誹謗中傷に詳しい弁護士に相談しましょう。

目次

1. 報道の内容と相手方についての推測投稿

複数のメディアで、お笑いトリオジャングルポケットのメンバー斉藤氏が不同意性交などの疑いで書類送検されたとの報道がされました。

その報道を受けて、斉藤氏が所属していた吉本興業ホールディングス株式会社は、10月7日をもって同人とのマネジメント契約を解除しました。

報道の中で、ロケバス内、20代女性、タレント兼インフルエンサーなどの情報が出てきたことから、インターネットやX上で相手を特定するような動きが出ています。

2. 不同意性交等罪について

不同意性交等罪とは?

今回の騒動で問題となっている不同意性交等罪とはどのような犯罪でしょうか?

不同意性交等罪は、次の行為をして、断ることが難しい状態で、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部を挿入した場合に成立します。

  1. 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
  2. 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
  3. アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
  4. 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
  5. 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
  6. 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
  7. 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
  8. 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

不同意性交等罪の刑は、5年以上の有期拘禁刑です。(刑法177条)

近年は性犯罪の法改正が多い

性犯罪は、近年罰則対象が広がり、罰則自体も厳しくなっています。

性犯罪については、平成29年まで強姦罪という犯罪がありました。強姦罪は、女性を対象としていること、手段は暴行・脅迫を用いて姦淫(性交)することが対象となっており、罰則も3年以上の懲役でした。

平成29年7月13日施行の改正により、強姦罪は強制性交等罪に変わりました。次のような変更がありました。

  • 対象が女性以外にも広がりました。
  • 性交以外の行為も性交等として規制の対象となりました。
  • 罰則が3年以上から5年以上の懲役と重くなりました。

令和5年7月13日施行の改正により、強制性交等罪は不同意性交等罪に変わりました。次のような変更がありました。

  • 暴行脅迫以外の方法も処罰対象となりました。
  • 暴行脅迫等を用いなくても、16歳未満の者と性交等をした場合は不同意性交等罪になりました。以前は13歳未満が犯罪でした。

お互いの同意形成がより一層重要に

性交等を行う場合は、お互いきちんと同意形成することが重要です。

たとえば、酔っぱらった勢いで性交等を行った場合は、後日、不同意性交等罪として犯罪となる可能性があります。

相手が同意をしているように感じても、実は内心は嫌で断り切れなかった、お酒の勢いで正常な判断や反対の意思表明ができなかったという可能性もあります。

3. 被害者の特定や推測投稿の法的問題点

被害者を特定したり、被害者であろうと推測の投稿を行ったりして個人名を出すことは、①プライバシー侵害②名誉毀損③名誉感情侵害となることがあります。

①プライバシー侵害②名誉毀損③名誉感情侵害となる場合は、投稿を削除することが可能です。また、投稿者は不法行為として損害賠償の責任が発生する可能性があります。

① プライバシー侵害

本人が第三者に公開されたくない、知られたくない私生活上の情報はプライバシー情報にあたります。

犯罪の被害者であるという情報も、第三者に知られたくない私生活上の情報といえるのでプライバシー情報だといえます。

そのため、犯罪被害者を特定して、インターネット上で被害者名を公開したり、Xで投稿・拡散する行為はプライバシー侵害として違法となる可能性があります。

② 名誉毀損

被害者名を特定して、被害者にも非があったかのような投稿がなされるケースがあります。たとえば、次のような投稿です。

  • 「加害者は、ハニートラップにひっかかった」
  • 「被害者が加害者を勘違いさせるような行動をとったのが悪い」
  • 「被害者が加害者を誘惑した」
  • 「自ら行為をしたのに同意がないってどういうこと」

被害者に非があるかのような投稿は、被害者の社会的評価を低下させて、名誉毀損に該当する可能性があります。

③ 名誉感情侵害

被害者の自尊心を傷つけるような投稿は名誉感情侵害として違法となる可能性があります。

たとえば、被害者に非があるかのような投稿は、被害者を深く傷つける行為であり、名誉感情侵害となる可能性があります。

4. まとめ:被害者の特定や推測投稿は違法となって削除できる可能性があります

  1. 性犯罪の規制対象は年々広がり、罰則も強化されています。
  2. 被害者を特定したり、推測投稿することは、プライバシー侵害、名誉毀損、名誉感情侵害となり、違法となる可能性があります。
  3. 違法な投稿は削除できます。投稿者は損害賠償責任を負う可能性があります。

被害者を特定したり、推測投稿することは法的にも問題があります。何より相手を傷つける行為なので控えましょう。

誹謗中傷をされて今後の対応に困ってる方はぜひ一度ご相談ください。

監修者:よつば総合法律事務所 弁護士 辻悠祐
プロフィール

大阪弁護士会所属弁護士。よつば総合法律事務所大阪事務所所長。企業法務チームに所属。インターネット上の誹謗中傷の対応、企業及びクリニックの顧問業務、使用者側の労働問題などを担当している。

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

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