1. すき家の異物混入に関する報道

すき家の異物混入に関する報道及びSNSでの投稿が広がっています。

具体的には、2025年1月21日、すき家鳥取南吉方店で味噌汁にネズミの死骸が混入した事案が発生し、3月28日には昭島駅南店でお客様に提供した商品に害虫が混入していたとのことです。

この異物混入の問題を受けて、3月31日から4月4日まで害虫・害獣の対策のために一時閉店を行うことを発表しています。SNSでは、味噌汁に入ったねずみの写真が拡散されるなど問題が広がっています。

飲食店では、衛生管理や害虫等に関する口コミ投稿がなされるケースも多いです。このような投稿についての問題点を弁護士が解説します。

2. 異物混入の報道は名誉毀損に当たらないか?

各社が異物混入報道について報じています。

名誉毀損罪は刑法で次のとおりに規定されています。

刑法第230条(名誉毀損罪)

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

つまり、仮に報道内容が真実であったとしても、条文上は名誉毀損罪に該当する可能性はあります。しかし、次のとおり報道内容が真実である場合は名誉毀損として処罰されないことが明記されています。

(公共の利害に関する場合の特例)

第230条の2 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

まとめると、報道内容が名誉毀損にあたるかは報道内容が真実であるかが重要となります。

つまり、真実の報道であればたとえ飲食店の社会的評価を低下させる内容であっても法的には名誉毀損罪にあたらないということになります。

3. SNSでの拡散は名誉毀損に当たらないか?

SNSでは、味噌汁に入ったねずみの写真が拡散されるなど問題が広がっています。写真とともに憶測投稿が行われているものもあります。

そこで、投稿者と投稿内容ごとにわけて名誉毀損に該当する可能性があるのか解説します。

食事をしていたお客さんが投稿する場合

食事をしていたお客さんが異物混入事案に遭遇して、Google口コミに写真を投稿するケースでは原則として名誉毀損にあたりません。

理由としては、異物混入の事実が真実であり、公共の利害・目的が認められる可能性が高いため名誉毀損を処罰しないケースに該当するためです。

第三者が写真を引用のうえで憶測投稿などを拡散する場合

このケースでは、写真の引用及び憶測投稿が名誉毀損として処罰される可能性があります。

名誉毀損が処罰されないためには、①公共の利害に関する事実であること、②目的が専ら公益を図ることにあること、③真実であることの証明が必要です。

たとえ写真が真実であったとしても、憶測投稿の内容に虚偽事実が含まれている、もしくは投稿内容からして公益を図る目的が認められない場合は、名誉毀損として処罰してはいけないケースではありません。

そのため、第三者が写真を引用のうえで憶測投稿などを拡散する場合は名誉毀損として処罰されるリスクもあることは理解しておく必要があります。

投稿の一部が真実であれば、すべての違法性が消滅するというわけではないです。憶測投稿には注意をしましょう。

4. 飲食店ができる対応策

異物混入の問題について、飲食店ができる対応策は以下のとおりです。

① 衛生管理の徹底

店内の清掃を徹底する、食材の保管及び管理の方法を徹底することが考えられます。

② 害虫・害獣対策

害虫・害獣の侵入経路がないかを確認のうえで侵入防止策を徹底します。仕入れた食材に害虫がついていないか確認することも重要です。

③ 社内マニュアルの作成と従業員教育の徹底

衛生管理及び食品の提供に関する社内マニュアルを作成のうえで、従業員に周知・徹底することが重要です。

たとえば、食品提供時に異物が混入していないか目視で確認するだけでも異物が混入した料理をお客さんに提供するリスクを軽減できます。

また、異物混入事案が発生した際の対応マニュアルを作成することも重要です。異物混入のSNS投稿などは店舗側の対応に不満があってなされるケースが多いです。

適切な対応を行うことで、SNS投稿のリスクも軽減できる可能性があります。

④ 悪質な投稿がなされた場合の法的措置

悪質な誹謗中傷を繰り返す投稿者には、投稿の削除損害賠償請求刑事告訴などの法的措置が考えられます。

5. まとめ:誹謗中傷は控え、飲食店は適切な対策を実施

  • 安易な憶測投稿や拡散は名誉毀損に該当するリスクがあるので控えましょう。
  • 飲食店は異物混入防止のための対応策を実施のうえで、従業員教育を徹底しましょう。

どれだけ気を付けても異物混入する可能性はゼロにはできません。

異物混入した場合の適切な対応についても、マニュアルを作成のうえでお客さんの不満が溜まらない接客を目指しておく必要があります。

SNSの投稿などでお困りの飲食店はぜひ一度ご相談ください。

また、誹謗中傷をされた、投稿が炎上して今後の対応に困っている方もお気軽にご相談ください。

関連記事

監修者:よつば総合法律事務所 弁護士 辻悠祐
プロフィール

大阪弁護士会所属弁護士。よつば総合法律事務所大阪事務所所長。企業法務チームに所属。インターネット上の誹謗中傷の対応、企業及びクリニックの顧問業務、使用者側の労働問題などを担当している。

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。