動物病院への悪質な誹謗中傷は削除できます。

この記事では動物病院やペット関連事業の皆様にむけて、Facebookや2ちゃんねる、ブログでの悪質な口コミ事例の削除を誹謗中傷対策に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。

目次

Q 動物病院への悪質な書き込みをFacebookで発見しました。削除できますか?

相談内容

動物病院への書き込みがFacebookで行われました。投稿内容は次のような内容です。

  1. 病院に能力の低い医師や看護師がいる
  2. 故意に患者を殺害する看護師がいる
  3. 検査データ漏洩などの不祥事が発生している

記載内容はいずれも真実ではありません。このような書き込みがあると、新規の飼い主さんはもちろん、従業員のモチベーションにも影響します。削除できますか?

(東京地方裁判所平成28年5月18日判決を元にしたご相談事例)

A 削除できる可能性が高いです。

弁護士の解説

投稿内容を名誉毀損で削除できるかは、次の要素が重要です。

  1. 投稿内容が事実を摘示していること
  2. 投稿内容が社会的評価を低下させること
  3. 違法性阻却事由の不存在(特に内容が虚偽であること)

裁判の判決では、Facebookへの書き込みにつき、名誉毀損であり権利侵害があると次のように判断しました。

社会的評価の低下について

本件投稿は、原告の開設する本件病院につき、能力の低い医師及び看護師がいるのみならず故意に患者を殺害する看護師がいること、検査データ漏洩等の不祥事が発生していることなどを内容とするものである。

そして、一般閲覧者の通常の注意と読み方を基準にすれば、本件投稿は、原告の開設する本件病院の医療機関としての著しい不適格性を指摘するものといえ、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。

違法性阻却事由の不存在について

本件投稿の内容及び表現方法に加え、弁論の全趣旨によれば、本件投稿の内容は真実ではないと一応認められ、本件投稿につき違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情は存在しないといえる。

結論:Facebookでの名誉毀損の事例

したがって、①病院に能力の低い医師や看護師がいる、②故意に患者を殺害する看護師がいる、③検査データ漏洩などの不祥事が発生している等の事実ではないFacebookの書き込みは削除できる可能性が高いです。

Q 動物病院への悪質な書き込みを2ちゃんねるで発見しました。削除できますか?

相談内容

「〇〇病院」という動物病院を経営する獣医です。開業するまでは他の病院に勤務していました。最近2ちゃんねるで私の書き込みを発見しました。

投稿内容は、私が勤務していた前職場のスレッドへのリンクが多数貼られており、同スレッドには次のような投稿が多数ありました。

  • 犬の首に物凄い勢いで乱暴な注射をした
  • 診察もいい加減で処置も適当
  • 高額な治療をすすめてきた
  • 生き物を虐待している動物病院です
  • 病院では適切な治療を行わないばかりか獣医が患畜を虐待していた
  • 犬殺し動物虐待

私が動物を虐待する獣医という印象になってしまいます。削除したいです。

(平成27年11月24日東京地方裁判所判決を元にしたご相談事例)

A 削除できる可能性が高いです。

弁護士の解説

2ちゃんねるで、悪質な口コミが記載されているスレッドへのリンクを掲載された事例です。直接の悪質な書き込みではなくても、リンク先の悪質な口コミを合わせて読むことで社会的評価が低下します。

以前の勤務先での悪質な口コミをリンクさせることで、経営している動物病院の評価が下がります。そのため、記載内容が真実ではないときは削除できる可能性があります。

裁判の判決では、2チャンネルへの書き込みにつき、名誉毀損であり権利侵害があると次のように判断しました。

社会的評価の低下について

原告が勤務していたb病院のスレッドへのリンクが多数貼られており、同スレッドにおいても、「横浜市旭区 b病院 犬の首に物凄い勢いで乱暴な注射をした 診察もいい加減で処置も適当 高額な治療をすすめてきた 生き物を虐待している動物病院です」、「犬殺し動物虐待C・X」等、b病院では適切な治療を行わず、獣医が患畜を虐待していた旨の投稿がされていることが認められる。

一般の閲覧者の普通の注意と読み方を基準とし、引用しているスレッドの記載を併せて読んだ場合、本件投稿は、全体として原告の獣医としての適格性に問題があるという印象を与えるものであり、原告の社会的評価を低下させるものであることが認められる。

違法性阻却事由の不存在について

証拠によれば、原告は、動物を虐待したと評価されるような行為をしたことはなく、実際に飼主からクレームを受けたり動物愛護法違反等に問われたこともない旨陳述しており、これに反する証拠はない。そうすると、違法性阻却事由の存在を窺わせるような事情が存在しないと認められる。

結論:2ちゃんねるでの名誉毀損の事例

したがって、①犬の首に物凄い勢いで乱暴な注射をした、②診察もいい加減で処置も適当、③高額な治療をすすめてきた、④生き物を虐待している動物病院です、⑤病院では適切な治療を行わないばかりか獣医が患畜を虐待していた、⑥犬殺し動物虐待等の事実ではない2チャンネルの書き込みは削除できる可能性が高いです。


Q ブリーダーへの悪質な書き込みをブログで発見しました。削除できますか?

相談内容

「○○」という屋号でバーニーズマウンテンドッグ専門の繁殖と販売を行っているブリーダーです。

バーニーズマウンテンドッグを購入したお客様が次のような書き込みをしました。

先天性疾患が存在するとの診断書を提示されたにもかかわらず、保証請求に不当に応じなかった

確認したところ、バーニーズマウンテンドッグに先天性疾患があったことは事実ですが、診断書を提示されたこともないし、保証請求に不当に応じなかったこともないです。

このままでは、ブリーダーとしての社会的評価な評価が低下するので、投稿を削除してほしいです。削除できますか?

(平成26年3月28日東京地方裁判所判決を元にしたご相談事例)

A 削除できる可能性が高いです。

弁護士の解説

先天性疾患が真実であったとしても、残りの「保証請求に不当に応じなかった」という部分が虚偽である場合は、削除できる可能性は高いです。

実際、裁判でも次のように判断されています。

社会的評価の低下について

本件投稿は、・・・先天性疾患があるとの確かな根拠があるにもかかわらず、原告が、返金等、被告やBからの保証請求に不当に応じようとしなかったとの事実を摘示するものであり、原告が悪質な業者であるとの印象を与えるものであるから、原告の社会的評価を低下させるものであり、原告の名誉を毀損するものであると認められる。

違法性阻却事由の不存在について

被告は、本件投稿を行った平成23年4月頃から11月までの頃に、原告に対し、本件アドルフが先天性の腎疾患に罹患している旨の診断書、あるいは本件売買契約時点で本件アドルフが何らかの疾患等に罹患し、飼育管理上重大な支障を来している旨の診断書を提出していないのであるから、原告が、被告からの本件保証合意に基づく保証要求に応じなかったことは何ら不当とは認められないから、本件投稿のうち、原告の被告に対する対応が不当であると指摘した部分は真実とは認められず、被告の原告に対する要求が本件保証合意の要件を満たしていないことは、本件保証合意の内容を見れば容易に認識できることであるから、被告において、原告の被告に対する対応が不当であると信じたことに相当な理由があるとは認められない。

結論:ブログでの名誉毀損の事例

裁判の事例では、保証請求に不当に応じなかった旨の記載以外に、病気の犬を乱繁殖している、被災地に犬を放置して逃げ、詐欺的な販売方法を行っているなど悪質な口コミが多数投稿されていました。

裁判の事例では、ブリーダーは購入者に対して、名誉毀損等を理由とする損害賠償請求を行い、慰謝料100万円と弁護士費用損害10万円が認定されています。

損害賠償が認められるようなときは、削除請求も認められることが多いです。そのため、「先天性疾患が存在するとの診断書を提示されたにもかかわらず、保証請求に不当に応じなかった」というブログの書き込みは削除できる可能性が高いです。

Q 悪質な口コミを放置してはいけない理由

Facebookや2ちゃんねる、ブログでの書き込みは拡散する可能性があります。もちろん、それ以外のネット上の情報も拡散する可能性があります。

そのため、動物病院やペット関連事業の皆様は悪質な口コミを放置してはいけません。悪質な口コミを放置すると次のようなリスクがあります。

  1. 新規客の飼い主さんを不安にさせてしまう
  2. 既存客の飼い主さんを不安にさせてしまう
  3. 採用に悪影響がある
  4. 投稿内容は半永久的に残る

悪質な口コミを見つけたときは、早めに対応策を検討しましょう。

まとめ:動物病院への誹謗中傷の削除事例

投稿内容を名誉毀損で削除できるかは、次のような要素が重要です。

  1. 投稿内容が事実を摘示していること(評価は削除が困難)
  2. 投稿内容が社会的評価を低下させること
  3. 違法性阻却事由の不存在(特に内容が虚偽であること)

削除できるかは詳しい弁護士でないと判断が難しいです。悪質な口コミでお困りのときは、まずはご相談ください。

監修者:よつば総合法律事務所 弁護士 辻悠祐
プロフィール

大阪弁護士会所属弁護士。よつば総合法律事務所大阪事務所所長。企業法務チームに所属。インターネット上の誹謗中傷の対応、企業及びクリニックの顧問業務、使用者側の労働問題などを担当している。

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

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