1. 広がる憶測の投稿

タレントの中居正広氏の問題を巡り、インターネット上では様々な憶測記事が投稿されています。中居氏のトラブルの内容や被害者は誰だといった投稿も多くみられます。

当事者は示談が成立して、守秘義務条項も交わされているようなので当事者はこの件について話すことはできません。

この件について誰がリークしたかわからないにもかかわらず、被害者が守秘義務条項に違反したことを前提とする投稿も見受けられます。

このような憶測投稿についての問題点を弁護士が解説します。

2. 当事者の示談と守秘義務条項

当事者間でトラブルが生じて、問題を解決するときに示談書を交わします。

双方代理人がついている場合は、弁護士が示談書を作成のうえで守秘義務条項(口外禁止条項)を入れることが一般的です。

たとえば、次のような条項です。

甲及び乙は、本件紛争の経緯及び合意内容について、正当な理由がない限り第三者に口外しないことを約する。

守秘義務条項に違反した場合に違約金などのペナルティを設定することもあります。
しかし、示談書を含む契約書は、契約した当事者間でしか効力がありません。

つまり、事情を知っている第三者などが情報をリークしたとしても第三者が契約違反となることはなく、当事者もまた契約違反にならないです。

3. 被害者及びトラブル内容の憶測投稿の法的問題点

被害者やトラブル内容の憶測投稿は、①プライバシー侵害、②名誉毀損、③名誉感情侵害という理由で違法となることがあります。

3.1 ① プライバシー侵害

被害者等を憶測投稿することはプライバシーの侵害となる可能性があります。

他人に知られたくない私生活上の事実又は情報はプライバシーとして保護されます。

ここでいう私生活上の事実又は情報とは、真実だけに限りません。私生活上の事実と受け止められる可能性があるような情報もプライバシーの保護の対象となります。

つまり、憶測投稿の内容が当たっているかどうかにかかわらず、内容によってはプライバシーの侵害として違法と可能性があります。

もう少しわかりやすくするために、不倫の事例で説明します。

たとえば、「A(既婚者)は、Bと不倫をしている。」という情報がインターネット上で拡散されたとします。

AとBがホテルに入っていく写真とともにそのような投稿がなされていると、閲覧者はAとBが不倫関係にあると信じると思います。

しかし、実際はAとBは不倫関係にありませんでした。画像生成でAとBがホテルに入っていく写真が作成されており、リアルな写真ではなかったのです。

このようなケースでは、「A(既婚者)は、Bと不倫をしている。」という投稿は真実ではありませんが、AとBはプライバシーの侵害として投稿の削除や投稿者に対して損害賠償請求できる可能性があります。嘘の情報を拡散することは、対象者の社会的評価を低下させる行為なので、名誉毀損としても損害賠償請求ができます。

3.2 ② 名誉毀損

インターネット上で被害者名が特定されて、被害者に非があったような投稿がされるケースがあります。たとえば次のような投稿です。

  • Aさんは、被害者Xに誘惑されて罠にひっかかった
  • 解決金を受け取ったうえで、被害者Xは守秘義務条項に違反しており契約違反がある
上記のような投稿は、被害者の社会的評価を低下させて、名誉毀損に該当する可能性があります。

今回の騒動では当事者間で示談済みであり、守秘義務条項も交わされています。そのため、当事者が事実関係を公表及び説明することは困難であり、また適切ではありません。

報道の内容、インターネット上で拡散されている情報、ソーシャルメディアで拡散されている情報はどこまでが真実なのか不明な情報が多いため、憶測投稿を正当化する理由になりません。

3.3 ③ 名誉感情侵害

被害者を侮辱して自尊心を傷つけるような投稿は、名誉感情の侵害として違法となる可能性があります。たとえば、被害者に非があることを前提に侮辱する投稿を行うケースは違法となる可能性が高いです。

名誉感情の侵害は事実を具体的に挙げているかどうかは問いません。

たとえば、「ブス」や「頭悪い」と相手を侮辱するような発言も対象となります。

4. 投稿が違法な場合に起こせるアクション

プライバシー侵害、名誉毀損、名誉感情の侵害などで投稿が違法となった場合、投稿の対象者は次のようなアクションを起こすことができます。

  1. 問題の投稿の削除請求を行う
  2. 投稿者を特定して損害賠償請求を行う
  3. 誹謗中傷が悪質で名誉毀損罪や侮辱罪など犯罪類型に該当する場合は刑事告訴を行う

つまり、民事・刑事両面で投稿者を責任追及できる可能性があります。

関連情報
刑事告訴

5. まとめ:投稿削除・損害賠償請求や刑事告訴の可能性

憶測投稿は違法となって削除及び損害賠償請求の対象となる可能性があります。刑事告訴の対象となることもあります。

憶測投稿でお困りの芸能人や著名人の方はぜひ一度ご相談ください。

また、誹謗中傷をされた、投稿が炎上して今後の対応に困っている方もお気軽にご相談ください。

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監修者:よつば総合法律事務所 弁護士 辻悠祐
プロフィール

大阪弁護士会所属弁護士。よつば総合法律事務所大阪事務所所長。企業法務チームに所属。インターネット上の誹謗中傷の対応、企業及びクリニックの顧問業務、使用者側の労働問題などを担当している。

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。